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2013.08.27 Tuesday
青空キャンプ(6) 交流
ふくしま・かなざわキッズ交流キャンプは、発足当初に外からの働きかけもあって自ずと「交流」を打ち出すことになりました。今では「遠くのきみと今日から一番の友だち」ではじまるテーマソングまでできました。原発事故がなければ出会うことがなかった友として、未来までつづく深い仲になってくれればとの願いを込めています。
でも、交流するとはどうすることでしょうか。単に交流するだけで、そこから未来への力となるような何物かが果たして生まれるんでしょうか。
キャンプの間のひとときに「交流するってどうすることだ」と子どもたちに問いかけてみました。遊ぶ、いっしょに生活する、けんかする、助け合う、話し合うなどすぐにいくつか出てきました。交流って案外簡単にできそうです。海や山のフィールドにテントを張っていっしょに生活していれば、子どもたちがあげたような交流はすぐに実現可能です。ただそうして一年が経過して五回のキャンプを開いてみると、交流にはもっと深い世界があるのだと思うようになりました。
たとえば子どもたちにこんなふうに投げかけてみました。「交流とは相手の話をよく聴くことだと思う」。聞くこと、聞こえることなら意識せずともだれでもしているでしょうが、聴くのはとても難しい技です。静かに耳を傾けているようでも心の中ではちがうことを考えていたり、次はどんな言葉を返そうかと探っていたり、要するにいったい何を言わんとしているのかと相手の言葉に耳をそばだてることをいったいどれほどの人が心がけているでしょうか。相手の気持ちを知ろうともしないで、果たして交流など本当に成立するんでしょうか。
子どもたちに難しいことを言ったってしようがない、と言われれば、それではいつそれを心がければいいのかと問い返したと思います。おとなでさえ聴ける人が少ないからこんな日本になっているのだと、3.11以来痛感するようになりました。もちろんそういう自分をも含めてです。だからこの夏、せめてこのキャンプでは聴くことを大事にしたいと思ったのかも知れません。
交流が上辺だけを滑って行かないように、その場かぎりの歓声で終わらないように、これからまだまだ考えてみたいことがあるはずです。考えて試して、試行錯誤を繰り返しながらの保養プログラムなら、それもまたいくらかでも深まる交流なのではないでしょうか。子どもは未来、などと言葉では簡単に言えますが、その未来からの約束としての今なのだと、その笑顔や泣き顔やふくれっ面を見て痛感しています。
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2013.08.26 Monday
青空キャンプ(5) 忍耐
青空キャンプ前半の森篇をひと言で表すなら、「耐える」という言葉にします。キャンプの間毎日のように降りつづいた雨に耐え、スタッフは子どもたちに任せようと設定した態勢を大事にするために耐え、子どもたちは気ままに遊びながらもおとなの叱咤激励に応えようと耐えていたように思います。何か事が始まる時、一番先に求められる態度がこの忍耐であるなら、青空キャンプのスタートは本当に素晴らしいものでした。
後半に差し掛かったある日、希望者を募って山歩きをしました。目的地は小一時間ほどの距離にある石切り場。参加した四人の子どもたちの中に、おそらく内容を理解しないまま希望した6歳のユウタもいました。案の定、歩き始めてすぐに「喉が渇いた」「疲れた」などと言い出しなかなかペースがあがりません。メンバーで入れ替わり立ち代わりしながらなだめすかしての山行となりました。目的地に辿り着きその景観の素晴らしさに感動した子どもたちが大きな歓声をあげて探検を始める中、ひとりユウタだけは「恐い」と言って一定の線から決して中に入ろうとしませんでした。せっかく我慢して歩いてきたのに残念、と思いましたが、恐いという経験もまた現代では得難く大切なもの。多いに満足して帰路につきました。
その帰り道、何度も立ち止まっては「もう動けない」と泣きつくユウタ。おんぶして欲しかったのでしょうが、自分からそれを求めることだけはしませんでした。目を腫らし大粒の涙を流す姿を見ながら、「がんばれ」とひと言声を掛けるしかありません。あとは黙ってじっと待っているとまた歩き出し、すぐにまた座り込んで泣き叫ぶ繰り返し。まさに耐えるユウタと、その姿に耐えるスタッフでした。おかあさんがこの姿を見たらなんと思ったことでしょうか。野生になる!ことは、だれにも決して生易しいものではありません。そのあとユウタは熱を出し寝込んでしまいました。
忍耐を冬に喩えるなら、やがてやって来る春に芽吹くものは、その忍耐の中から生まれるのかも知れません。忍耐は、種。生命の営みの中で一番先に宿る大事な大事なものだということを、今ふりかえって思います。
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2013.08.25 Sunday
青空キャンプ(4) キャンプという生活
青空キャンプと名づけた今夏の保養プログラムは前期の森篇と後期の海篇を合わせて20日間ぶっ通しのテント生活でした。お風呂は数日に一度近所の温泉に行く以外はドラム缶風呂(あまりに非効率で一度で断念しましたが)や施設の担当者が用意してくれた巨大な行水用のプールで代用し、洗濯も調理も基本的には子どもたち自らが率先してすることにしていました。ところが子どもたちの予期せぬ実態に、当初の思惑が大きく外れました。まず当たり前だと思っていた毎日の歯磨きを、キャンプ6日目にして尋ねてみると、なんとまだ一度も磨いていないという子が数人もいてびっくり。毎日励行した子はひとりもいませんでした。食事も自分たちで準備しなければ食べられないことを一度経験すればいいと傍観していましたが、粗食でもなんの不満もなく淡々と終わってしまったのでした。自分を時々の状況に合わせるというより、もしかすると現代っ子は感覚が鈍っているのではないかと思ったほどです。野生になる!というテーマを掲げてはみたものの、野生的な欲求はほとんどその場かぎりの遊びに限定され、あとはあなた任せの指示待ちが多かったように思います。その指示にさえ敏感に反応してくれることは稀でした。
でも森篇の間は毎日のように雨にたたられ、中まで濡れたテントを乾かしたり、夜半は管理棟に避難したり、立て直して心機一転で臨めばまた大雨という具合で、悪条件の中でキャンプをやり通したというだけでも子どもたちを褒めてあげたいと思います。乗り越えるという経験を少しずつでも重ねて行くとき、それこそが大切な思い出ともなり、明日への自信にもなるでしょう。とは言いながら、その場を準備したスタッフのおとな自身もほとんどが自然からほど遠い生活をしています。子どもたちといっしょに経験を積み重ねるキャンプになりました。
屋外で生活するためには、たとえば薪割りが必要になります。鉈を手にする機会などおとなでも少ない今、子どもたちがぎこちなく振り上げる様にはらはらしては声を掛け、それでも小さなケガが絶えませんでした。目を離していては危険な環境だとわかっていても、四六時中見ていることはまず不可能です。子どももおとなも自ら経験して学んで行くしかありませんでした。一番ケガしたタケゾウの、最後には火起こしのための細い薪を手際よく切り分けていた姿を忘れられません。
キャンプが始まって早々に、最年少の6歳のユウタがくるぶしの辺りにぱっくり傷口が開くケガをしました。抱きかかえて救急セットまで走り寄り応急措置をするスタッフのごんちゃんが、「これは医者ですね」と即決断。横でほとんど傍観していたぼくはその声を聞いてハッとしました。(そうか、これは決断しなければならない状況だったのか)、などと書くとなんとも信用できない代表になってしまいますが、まさに生活の場でも同じように決断しなければならない瞬間が数多くあるはずで、それに気づけないでいたのでは、子どもたちに感覚が鈍いとか麻痺しているなどと言えたものではありません。刻々と変化する時の流れに敏感であることが、キャンプという生活の場では特に大事だったような気がします。
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