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2012.08.28 Tuesday
ますやんの悪童日記(7)自由とは(能登島編)
福島第一原発事故が起こり、この先も何十何百年と放射能汚染に悩まされながら、日本人は生きて行かなければならなくなりました。そんな中でも自由はあるでしょうか。自由の側面のひとつが自分の生き方を決めることだとしたら、世界がどんな状況だろうが、いつも自由だということになりそうです。このキャンプに参加した子どもたちに伝えたかったことは何かと問われるなら、ぼくは即座に答えます。「自由を謳歌しよう!」。
余りあるほどの自由を思うがままに生きようとするのは、かなり骨の折れる仕事です。反対に束縛されていると思うと、それもまた自由ではない自分ばかりを見ることになりそうです。自由ほど扱いにくいものはありません。大体は、自分で自分を規制しているんですから。
FKキッズ交流キャンプ2012は、自由な時間がいっぱい詰まっていました。お話会、お絵描き、ツリークライミング、水族館見物などプログラムもそれなりに組まれていましたが、あくまでも子どもたちが思いのままに過ごせるキャンプにしました。眠りたいときは眠っていればいいし、もしかすると喧嘩さえもしたければそうすればよかったんです。でもそれらすべての自由は、キャンプの雰囲気が仲良しであることが大前提だったようです。その思惑は大きく外れてしまいました(とその時は思ってしまいました)。実行委員会のメンバーも協力スタッフも、子どもたちの逆襲に(笑)慌てふためいてしまったのです。
問題はいつもひとりの子から始まりました。今から思うと、誰もがみんななんであんなに動揺したんでしょうか。たったひとりに子のために、みんな自由を自ら放棄してしまったかのようでした。あいつがこうだから、おれはこうなった。あの子が荒れるから、私も同じように荒れた。その様子を静かに見守っていたスタッフも、もしかするといたかも知れません。ただぼくにはそれに気づくゆとりが残念ながらありませんでした。代表が自由じゃない自由なキャンプなんて、まったくお恥ずかしいかぎりです。
ある女性スタッフと話し込んだ夜、ようやくぼくは目覚めることができました。「手のつけられなかったわたしの息子が心の病気だったんだと診断されたときは、正直、ホッとしたのよ。病気なんだから、仕方なかった、そう思えてね。あの子もね、もしかすると病気かもしれない...」。ぼくはハッとしました。外側の見える姿でしか判断していない偏狭な目で子どもたちを見ている自分がとてもちっぽけに思えました。なんてこった。福島の子どもたちの笑顔と元気を応援し、さらには石川の子どもたちと友達になってもらいたい、なんてかっこのいいことばかり唱えながら、その中味たるやなんてことありませんでした。
目が覚めたその夜以降も、キャンプの間中葛藤が続き、あわよくば問題児に退場してもらいたいと思うことが何度となくありました。毎晩のミーティングがそうすることを思い留めてくれたようです。誰もが煙たがる子を排除していたなら、邪魔者は消せばいいのだと、ほかの子どもたちに教えてしまうことになったかも知れません。そして問題児は他でもない自分の中にもいることを、ついに知らないままで終わっていたかもしれません。自由を大きなテーマに掲げながら、いい形で終われたとは決して言えません。それぞれが有耶無耶を残したまま、つまりは宿題を抱えたまま家路についたかもしれません。ただこれから先の日々で、本当の自由とはなんだろうかと、考える自由意志だけは保障されています。ほとんどがまだ幼い子どもたちでしたが、もう少し後になってこの日記を読んでくれる日が来るかもしれません。その時のためにもここに書き残しておきます。
おい、みんな。怒鳴ることが多かったますやんだけど、思いっきりみんなと遊べたし、今思うと幸せなキャンプだった。ありがとう。でもありがとうついでに言っておくぞ。あの子が居てくれたおかげで、みんな真剣に腹を立てたし、みんなで戦争ってなんで終わらないんだって考えることもできた。いいかい、これからも諦めないで考え抜くんだ。よく考えれば、今日よりは明日へと、一歩ずつでも前に進めるかも知れない。みんなの周りを見てごらんよ。簡単にいっぺんに解決する問題なんて少ないだろ。だからゆっくりと丁寧に話し合って考えよう。みんなとそんなキャンプが出来て、ますやんはとってもうれしかった。またいつか会おうぜ!
ますやんの悪童日記(7)
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2012.08.24 Friday
ますやんの悪童日記(6)自由とは(医王の里編)
キャンプに関わったスタッフの間では今、これからの展開を踏まえた感想や反省点を盛んにやりとりしています。その中にひとつ、ぼくにはとっても興味深い指摘がありました。「交流という割にはただ漫然と遊んでいる印象を受けました。もっと魅力的なプログラムを通して学び合えるもの、達成感のあるものを準備した方がいいのでは」というものです。まさに今回のキャンプはその逆を行っているものでした。
学びとは、用意されたものでしょうか。達成感とは、だれが達成して感じることなんでしょうか。多分ですが、その道の達人をお迎えしてのプロフェッショナルなプログラムが目白押しのキャンプなら、それなりに実りあるものになると思いますが、それでも参加する子どもたち全員にそれが合うとは限りません。学びも達成感も充実感も、そんな類いのものは本来は自由に生きた人生の中にこそあるのではと、この年になって思うようになりました。誰かからプレゼントしてもらうものではないのです。
では自由とは、いったいどんな状態を指して言うのでしょうか。なにもかもプロや公的な専門機関に委ねて暮らしている日本の現代社会で、果たして自由なんてあるんでしょうか。病気でもないのに病院でお産をし、より良い人生をと相変わらず学歴を重要視し、就職に失敗したからといって死を選ぶ。働くことは食べて生きていくためでもあり、何かを達成することかも知れませんが、果たしてそれだけでしょうか。老いて病んで、他人に自らの命を委ね、お棺に入るのも専門業者にお任せ...。それであなたは、自由ですか?
というような話を、本来はこのキャンプに参加した子どもたちと話し合ってみたかったんですが、そんなうざい話は見向きもされないのがおちです。だから、まずは弄ぶほどの自由を保障しようと企てたわけです。何事も経験しなければ。全くの自由などというものは、ぼくたちにもよくわかりませんが、少なくとも何をしていいのかも分からない現代の子どもたちにとって、自由に使える時間を体験することはとても貴重だと思います。
旨い具合に、17日間の全日程を参加した郡山のユースケはとても活発な子でした。地元石川のリョースケ、タイチとまるで三人兄弟のようにして毎日適当に(笑)過ごしていました。スタッフから持ち込まれたトランプさえ必要なかったかもしれません。遊びさえ用意されていない環境で、みんな思い思いに遊んでいました。遊びって、新たに生まれるもののようです。この創造性こそ、自由がもたらすものではないでしょうか。なんでもかんでも用意され、してもらうことが当たり前の世の中になってしまいました。用意する側の気持ちなどちっとも考えない、自分勝手な人間がそこここにいるような気がしてなりません。そんなことを、遊んではめを外して叱られて、少しでも体験できたのであれば、このキャンプは大成功です。
たとえ単なる漫然とした遊びでも、それをするためには学ばなければならないこともあります。そのとき初めて自分から学ぼうとしませんか? どんな簡単なことでも自分の力で出来たなら、そのとき達成感という喜びを感じるかもしれません。押しつけは、学校や社会だけで沢山です。もしもFKキッズ交流キャンプが今後も続くなら、実行委員会で話し合ったこの総意だけは変わらずに残っていてほしいものです。
地元から参加した中にひとり、病的なまでに我がままな子がいました。そこから子どもたちに広がる影響はとても大きなものでした。なんであいつだけが、という感じて当たり前の言い分が何度も返ってきました。要するに、子どもたちのそれぞれの我がままが湧き返るキャンプになってしまったのです。
スタッフ全員、子どもたちと過ごす専門家では決してありません。知識も経験も乏しい中で、だから真剣に向き合わざるを得ませんでした。おそらく、参加した子どもたちもみんな、真剣になり始めたんだと思います。思い出すと真剣に遊び、真剣に怠け、真剣に喧嘩していたような気がします。
最も我がままだったそのひとりの子に向き合うのは、真剣になればなるほどとても疲れました。言ってわかるならまだよし、何度でも言いますが、言っても言ってもわからない子もいるんです。だからと言って、参加者の誰にも自由を保障するという大前提を崩す訳には行きません。スタッフの葛藤は、ほぼ毎日のように繰り返されました。少なくとも、「家に帰る」と自ら言わない限り、その子の居場所を取り上げては行けないことを申し合わせました。
そして今キャンプを終えて感じることの中に、その子の存在の大きさがあります。我がままな子がひとり居てくれたおかげで、全員一度ならず、とっても我がままな自分になれたような気がします。自由とは、我がままな一面があり、その我がままを越えたところにあるのかもしれません。ひとつひとつを選び取り、また新しく産み出しながら明日を生きて行く力は、自由のいろんな側面を経験してこそ獲得することができるのでは、などと、またキャンプの日々を思い出しています。
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2012.08.24 Friday
ますやんの悪童日記(5)たき火
火おもちゃしてると寝小便するぞ、と子どもの頃よく言われたもんですが、それほどまでに火は子どもにとっても魅力的だということでしょうか。能登島では直火が可能だったので、子どもたちは暇さえあればたき火をしては、釣った小魚やサザエを焼いていました。この写真などは夜明けの時間帯です。美しい海に気づくこともなく、または気づいていてもなんてこともないのか、とにかくサザエに集中していたふたりです。まるで海の男に見えますね(笑)。
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