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2012.01.30 Monday
kazesan calendar からのご報告
今年作った kazesan calendar の売り上げの半分を「福島の子どもを守ろうプログラム」に寄付しますとお知らせしたところ、12人の方から31セットご購入いただきました。今日、裏の郵便局から20,000円を振り込んできました。貧乏カメラマンがひとりでいくら足掻いたところで雀の涙ほどの寄付しかできませんが、先日のチャリティ上映会での寄付など、何人かの小さな思いやりが集まるとそれなりの力になり、おまけになんだか勇気まで湧いてきます。ご協力ありがとうございました。
支援先の
「福島の子どもを守ろうプログラム」
は、福島を離れることが出来ない子どもたちを招いて、春夏冬の長期の休みの間、遠くの自然の中で飛び回ってもらおうという、いっしょに遊んでみたくなる活動です。
放射線被爆の影響が予想される中、なぜ危険な福島を離れないのだという言葉をネット上で見かけることがありますが、人それぞれにいろんな事情があることは想像に難くありません。この状況は誰だって不安になるし、逃げられるものなら逃げたいに決まっています。それができないことを、ゆとりのある外から善意のつもりでいくら投げかけても、なんの解決にもならないのではと思います。自分ならすぐに福島を出る、と断言したところで、実際にその場に置かれたときの自分など、そうでない今、わかるはずがありません。
被爆の影響があるのかないのか、実際のところ、ぼくにはなにひとつわかりません。専門家と言われる人たちの話を各方面から入手し時間をかけて検討する気にもなれません。政府や東電を責める気持ちはありますが、おそらく彼らの立場とは、今あるような、そんなものなんだろうと思います。はじめから政治にはなんの力もなかったのだと思いはじめています。庶民は庶民の力で生きて行くしかないないのかも知れません。
限られた期間福島を離れることが子どもたちのためになるのか、それもぼくには本当のところはわかりませんが、もしも大勢の日本人が、残された、または残ることを選んだ子どもたちのためにいくらかでも持ち寄れば、何人かの子どもたちがまた元気に前を向いて歩く一助になるかも知れません。このプログラムを支援している田口ランディさんは、「あのときぼくたちのことを日本中のおとなが応援してくれたねと、何十年後かに言ってくれるようなおとなでありたい」と書いておられました。ぼくも本当にそう思います。
「福島の子どもを守ろうプログラム」は5年を目標に活動を継続するそうです。離れていると人っていつか気持ちまで離れてしまいがちですが、決して当事者になりきれるものでもありません。そしてたまたま今は当事者ではない、というだけのような気がします。
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18:48
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日々のカケラ
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マスノマサヒロ
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2012.01.21 Saturday
墓地へ
いつもほとんど気分がいい早朝の散歩なのに、時には低調なこともある。そんな日は何に出合っても文句が出る。写真を撮る気にもなれない。ならばと思いついてコースを変え、今朝は里山を切り開いた広大な墓地へと向った。まだ暗い墓場への竹林がいつになく薄気味悪い。何を恐れているのか、ちょっとした黒い影にも怯える。それでも、こんな時は墓地がいい。死者とか霊魂とかが眠っているものかなんの実感も持てないけれど、生きているばかりが人間ではないことに思いが及ぶと、己のちっぽけな気分などどうでもよくなってしまう。だから、墓地がいい。
ここには高さが五メートルほどもあろうか、赤子を抱いた観音像が立っている。墓参の人でもないのに訪ねれば決まって手を合わせる。縁のない領域に踏み込むあいさつ程度のつもりだが、薄暗がりの中で見上げた姿に、今朝はなぜか畏れを感じた。仏像を崇める気持ちになんてなれないのに、不思議だ。そう言えば、パラマハンサ・ヨガナンダの『あるヨギの自叙伝』の中で、山の粗末な石を無視したヨガナンダがその非を指摘される場面がある。お前はなぜ石に祈りを捧げなかったのか。神はお前が思っているような聖なるものばかりに宿るのではない。たしか、そういう言葉だった。
墓の中に死者の霊魂が住んでいるものか、そんなことだれにもわかりゃしない。けれども少なくとも墓は、大切な人を思う場所としては相応しい。墓を大切にしない者が死者を大切にしているだろうか。仏像もまた然り。そこに感じる畏れこそ、この傲慢な人間にはなくてはならないものだった。
暗い道に感じた恐れは、たぶん、南洋の島のジャングルを彷徨い逃げ回った太平洋戦争の日本の兵隊たちを思ったからだった。図書館で借りた江成常夫の写真集『鬼哭の島』にある帰還兵たちの証言があまりに鮮烈で忘れられない。食料も弾薬も尽き果て、暗い密林を逃げ惑った若者たちは、どんな気持ちだったろう。愛する家族のために皇国のためにと戦争に駆り出され、二百四十万もの将兵が戻れなかった。それも戦いの場でなく、ほとんどが飢餓や病で。江成がまえがきで書いている。「『玉砕』という美名で装われた戦歴の島々は、まぎれもなく成仏もできない死者たちの『鬼哭の島』である」と。この日本の繁栄は戦没者のおかげであるなどと公では言いながら、遺族以外のいったいだれが彼らの霊魂に対して本気で手を合わせてきただろうか。今もまだ百万に余る若者たちの骨が南の島で哭いている。
きょうまで戦争のことなどなんの実感もなく過ごしてきた馬鹿者がここにいる。数々の犬死にも似た死者を思うと、居たたまれなくなる。この国はいったいどこを向いているのか。経済発展至上の果てが今の姿だ。だから暗い道が恐いのかもしれない。
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日々のカケラ
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2012.01.16 Monday
身体感覚
このごろ身体感覚というものに注目している。これから老いて行くばかりの体だとしても、感覚まで鈍らせることはない。女心には昔から鈍感な男だったが、体には割と敏感だった。あれは確かまだ小学生のころだった。何かの拍子に人差し指をもう一方の手のひらに向けてなぞると、触れてもいないのにもぞもぞと指の動きに合わせて感じる何ものかに気づいて、以来それとよく遊んだものだ。その何ものかの正体はこれのことだったのかと、気功に出合い理解した。人間の体は、見えない気の集合体だった。
おやじの通院に付き合い出向く病院の待合室には、いつも人があふれている。長く待たされ数分の診察を受け、それが唯一の方策の患者も多いことだろうが、己の体を医者とは言え他人に任せ切りだとしたら、何か大きな間違いがそこにあるような気がしてならない。怪我や病気に縁のない体なんてないだろうが、体のことを健康や不健康、元気のあるなし、若い若くない、美しい醜いなどと、表層の見てくればかり気にしていたのでは、せっかく感じる体を持って生まれて来た甲斐がない。
早朝の散歩を再開したついでに気功も復活した。途切れ途切れで、気功とはもう二十年ほどの付き合いになる。中国数千年の歴史が培ってきた気功には何千という功法があってあれもこれも身につけたくなる時期もあるけれど、昔から続いているのは、結局もっとも簡単なスワイショーと站とう功で、ようするにほとんど立っているだけ。スワイショーは両手をぶらぶら振り、站とう功ときたら立ち続けるのが仕事だ。それでも体とは本当に不思議なもの。簡単な動作を繰り返していると、脳がどんどん休まっていく。站とう功は座禅ならぬ立禅でもある。
再開してまだひと月ほどなのに、感覚の深まりを感じてまた病み付きになりそうだ。こういう病なら大いに結構だ。三円式站とう功は立ちながら三つの気の玉を抱くもので、今朝はことに愉快だった。見えない気の玉に体ごと吸い込まれると言えば近いだろうか、そうかやっぱり体は気の集まりだったんだと感じられた。大地に融けてゆく心地もして、放っておくと一時間ほども立ってしまう。今はまだほどほどに。気功することを練功という。つまりは気のトレーニングだ。トレーニングに早急な成果を求めては行けない。日々積み重ねてこそ意味がある。それに立ってばかりいたのでは、写真が撮れないじゃないか(笑)。
なんで身体感覚か。自分で考えるという癖を身につけようと、この一二年試みてきたけれど、考えるということがどうすることなのか、恥ずかしながら正直よくわからない。考えるためには話し合ったり読んだり調べたりしなければならないだろうが、それもどうにも長続きしない。考える葦である人間として、これからも努力は惜しまないつもりだが、せっかく考えたものを腹に落とすということが出来なければ、確たる行動にもつながらないだろう。その、落とすべき腹を作るためにも、体を調えていきたい。
そう言えば気功の目的にも、調身、調息、調心がある。脅迫観念に駆られた健康ではなく、大自然と気をやりとりしながら体を調えることで全人的な調和へと深まって行く手もある。頭ばかりか体の全部で考える、そして撮る、生きる。この人生があと何年続くものか、などはそれほど大した問題じゃない。要は、今ここにある体をどこまで深く認識し、その体に宿る己とどこまで深く付き合えるか。写真にしても、なにもかも気がつくのが遅すぎるけれど、気がついたのだから、はじめよう。
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日々のカケラ
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マスノマサヒロ
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