kazesan3風の吹くままカメラマンの心の旅日記

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| | - | - | - | posted by スポンサードリンク |
能登はやさしや

 

 久しぶりに能登へ出かけた。能登はいい。誤解を恐れずに言えば、過疎が進めば進むほど、その味がにじみ出てくるような気さえする。能登はやさしや土までも。ぼくの能登の友人はよくその話をする。土までがやさしいのだから、ほかのすべてがそうなのだろう。思わぬ好天に誘われて狼煙まで足を伸ばし、帰りは輪島を通って行こうと国道249号線を海沿いに走った。木ノ浦を過ぎたときだった。左へカーブしながら坂を上り切ると、目の前に広がった海が光り輝いていた。なんと美しいのだこの地球はと、思わずため息が出る。厚い雲間からこぼれる陽光ほど神々しいものはない。あれは貨物船だろうか。見えないけれど、汗と油にまみれた海の男たちが必死の形相で船を操っている漁船も浮かんでいるにちがいない。この光に包まれて、さぞかしいいひとときを過していることだろう。能登は海も、こんなにもやさしい。そのやさしさを受け取れば、となりの人にもやさしい心を向けていられる。能登にいると、旅人さえもやさしくなれる。





| 17:14 | 日々のカケラ | comments(0) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
美は乱調にあり
 昔読んだ、瀬戸内晴美『美は乱調にあり』という本のタイトルがこのごろよく浮かんでくる。出会ったばかりの乃江という女性が、「私の名前は伊藤野枝にちなんだものなんですよ」と教えてくれた、その伊藤野枝の生涯を描いている。話の内容はすっかり忘れてしまったが、タイトルばかりが鮮やかに蘇ってくる。続編は、『諧調は偽りなり』だ。

 枯れてゆくものに惹かれていると、自ずと目は、乱れているものにも向いて行く。度が過ぎて、整然としたものには、まったく興味が失せていく思いだ。すると、美しいということが、ある基準に当てはめて感じているに過ぎないのだと思えてくるから不思議だ。かわいい、とか、きれい、を連発する若い女性たちに先導されてか、それとも資本主義のそれが策略か、とにかく基準が設けられている。しかし、美は乱調にこそありだ、となぜかこのごろ感じている。







| 21:36 | 日々のカケラ | comments(0) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
枯れてゆくもの
 若いころから枯れてゆくものに惹かれては、撮ってきたけれど、このごろその度合いがますます強くなってきた。惹かれる、というより、むしろ、枯れてゆく者として親しみを感じているのかもしれない。

 花の盛りはもちろん美しいけれど、薄汚れてきたころの、すこし疲れたような花を見ていると、なんとも言えない味わいを感じてしまう。その味わいをひと言で表すことなどとてもできないが、そのとき、美しさを越えた、崇高なまでの、思わず祈りたくなるような気持ちにさえなる。

 だがぼくは、祈りとはなんなのかを知らない。祈りという響きに憧れさえ感じているのに、祈りの意味を知らないのだ。祈るとは、どうすることか。だれに祈るのか。なにを祈るのか。祈ると、どうなるのか。それらすべてのほんとうのことを知らないぼくは、だからほんとうには祈ったことがない。



 枯れてゆくものを見つめていると、ごくろうさんでした、とささやきかけたくなる。そしてなぜだかわからないけれど、また歩き始めることができる。ぼくはそのとき、なんとも言えない強烈な存在感を感じているのだろう。枯れてゆくものは、もうなにひとつ主張していないというのにだ。

 枯淡という言葉がある。俗気が取れ、淡々として、しかも深いおもむきを内に宿していることだろうか。宿しているものは、けして見えないのだ。宿しているから、培うことができるのだ。枯れてゆくものには、そういうおもむきがあるのかもしれない。

 ぼくも、そろそろと、枯れていく日々だ。自分で自分のおもむきなど感じることはできそうにないけれど、せめてこの平凡な毎日を噛みしめていたい。残された人生の日々の、今日という日はいつも初日で、だから新しい。枯れてゆくことの中にこそ、鮮烈な命を静かにわしづかみしている手応えがある。枯れてゆくものは、だから、ほんとうに生きているとも言えるのだ。できることなら、その生きている間に、祈りの意味を知りたいものだ。






| 15:34 | 日々のカケラ | comments(2) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
| 1/10 | >>