kazesan3風の吹くままカメラマンの心の旅日記

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有象無象
 釈迦岳の山頂に近づいたころ、雪道に疲れて一息入れようとリュックを下ろした。その時だ。ガサガサっと凄まじい音を立てて開いている穴から飛び出してきたものがある。ウサギだ。もう速い速い。目にも止まらぬスピードだった。あいつならどんなハンターにも撃たれないだろう。冬毛なんだろうか、白くなりはじめた体毛がいくぶん逆立っているようにも見えた。

 雪道に残っていた足跡はあいつのものだったのか。まるで後をつけるように登ってきた。それが途切れて、ここからはひとりぼっちの山道になるのかと小さな緊張感が生まれたときだったのだ。鈍感な人間だから、安心してやり過ごそうとでもしていたんだろうか。まさか隠れている穴の前で立ち止まるなんて思いをよらなかったに違いない。本当にびっくりしたんだろうなあ。ぼくだって無茶苦茶びっくりしたんだから。

 山にはいろんな動物がいるだろうに、滅多に会うことがない。会っていても、ぼくにはわからないだけかもしれない。でも会うと、なんとなくうれしい。動物には迷惑な話だろうが、こっちの気分は友だちだ。クマもほんとうはとても優しい生き物だという。ただ人間が恐い。恐いからはちあわせると自衛のために襲ってくる。ウサギなら逃げる、クマなら襲う。その違いがあるだけだ。あとは人間がどうするかを考えるしかない。山は彼らのすみかなんだから。

 山頂についた。一面の雪。気がつくと灰色の空からちらほらと舞い降りていた。寒い。ここはもう冬なんだなあ、なんて悠長に構えている余裕もなくなってきた。サッサとおにぎりを腹に詰め込んだ。コーヒーはどうしよう。せっかく持ってきたんだからと、カップを出して湯を注いだ。


 そのとき、ふんわりと目の前を過ぎてゆく小さな虫がいた。なんだ? あれ、クモじゃないか。なんでお前、飛べるんだ。まっ白な背景で見えなかったが、目いっぱい長く出した糸にぶら下がってでもいたんだろうか。とにかく愉快なやつだ。ここは標高2000mだぞ。冬だぞ。いったいなにしてるんだ、と聞かないうちに、ふわふわふんわり、別山方面に向かって飛んで行った。笑うとコーヒーがとてもうまかった。
 
 ぼくが山にひとりで住めるとは思わないけれど、山に隠っている聖者たちのことを想像した。生きとし生けるものを彼らはどういうふうに見ているんだろう。命というものをどんなふうに捉えているんだろう。人の言葉ではなく、自分でそういうことを感じてみたくなる。

 ウサギとクモ、それにほら、小枝にとまって鳴いている一羽の小鳥。有象無象という言葉がいきなり浮かんできた。どんな意味かも知らないのに、不思議な話だ。調べた。「宇宙にある有形無形の一切の物。森羅万象」と「世にいくらでもある種々雑多なつまらない人々」(広辞苑)だそうだ。。困った。つまらない者なんて言われたくはないが、ウサギやクモや小鳥たちから見ると、つまらない人間に見えたりするかもしれない。それでもぼくも、森羅万象の一員だ。あいつ、きょうも跳ね回っているんだろうなあ。クモ、どこにたどりついたかなあ。


| 09:39 | 白山 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
白い山
 白山に雪が降ることにどうしてそんなに関心があるのか、毎年ニュースになる。初冠雪が何日か、ということは、梅雨入りや桜の開花、ウグイスだったかの初鳴きなどと同じ意味合いを持っているということなんだろう。それで例年より何日早いとか遅いとか添えられているが、だからなんだと言うのかよくわからない。降れば降ったで、なんとなくうれしいものだけど。

 紅葉と雪の白山を見たくて、ことし何度目かの釈迦新道を歩いた。登山道に入っていきなりのブナが色づいて、朝の光に輝いていた。きれいだ。ため息が出る。釈迦岳前峰の山頂に近づくにつれ、徐々に前日に降った雪が見えてきた。それがどんどん深くなり、足を取られて歩きづらい。軽装できたことが悔やまれた。青空はいつの間にか灰色の雲におおわれていたが、いきなりそれは現れた。この冬はじめての雪化粧。白い山、白山だ。途中で引き返さなくてよかった。この日、この道を歩いたのはぼくひとりだった。まるで白山とデートした気分だ。いきなりそのものに登ってしまうより、離れて見る白い姿をまずは拝んでみたかった。

 さて、冬の白山。一度は登ってみたいと思っているが、果たせるかな、この軟弱な者に。

 釈迦岳前峰より白山を望む


| 22:37 | 白山 | comments(0) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
贈り物
 昨日も今日も少し寝坊した。かと言って、何時に起きなくては、という予定があるわけでもないんだけどさ。朝一番の空気を思いっきり吸い込むと、一日をはじめる気持ちを感じさせてくれるものだ。今日も生きてるぞ、という感じがする。それではとゆっくりカーテンを開いて、サッシに手をかけた。「おお、なんだこれは」。いきなりのビッグプレゼント。まず目にしたのがこれだなんて、きょうはきっと素敵なことがいっぱい起こるぞ。天から届いた贈り物を静かに鑑賞した。そして今はもうたそがれ。一日中仕事場にいた。素敵なこと、いっぱいあったかなあ。珍しい方が仕事の話を一本持ってきてくれた。遠くの友から、悲しいってメールが届いた。思いつくままに返事を送った。すこし元気になったみたいだ。精一杯生きてる素敵な友だ。素敵な一日だった。ありがとう、虹さん。そろそろ今日を終えようかな。あしたまた、いいことあるといいなあ。




| 18:34 | 日々のカケラ | comments(4) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
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