ちかごろめっきり仕事が少なくなった。いつだったか、「もう今のような状態での仕事なんかしない」と心の中で宣言したことがあった。どうやらそれが功を奏したのかもしれないと、先行きどうするんだと少しは気にしながら、納得した。依頼されて撮ることに少なからず喜びを感じなくなっていたぼくは、人生の残りの持ち時間がもったいない、と決断したわけだ。そのあと少し変化があった。「今の仕事も楽しみながら、もっと自然に、自然に帰ろう」という気になった。まったく勝手な話だが、どうやら天は聞き届けてくれたようだ。何年ぶりかの仕事先から昨日電話があった。
「ますのさんはまだ撮影してもらえるんですか?」
「もちろんです」
「なんでも全国を飛び回って、公演とかで忙しいとか聞いたもので」
まったく驚いた。これではまるで芸能人じゃないか。kazesanに正直な気持ちを書くからだろうか。まぁ、ぼくなんかのうわさ話でも飛んでくれるんだから、それもよしか。世の中なんて思い通りになるはずがない、などという声は無視して、新しい流れにとりあえず感謝しておこう。
ぼくの夢は、山あいの村のでっかい借家に住んで、野良仕事もしながら、誰もが自由に遊びに来れる開放的なスペースを持つことだ。むちゃくちゃ元気なジジイになって、どうしたらそんなに健康なんだと、近所の年寄りが野菜や米を抱えてやってくる。代わりに身につけた気功や操体、自力整体を教えてやるんだ。ほがらかな村になること請け合いだ。そうだ、悪がきどもには、森の中での遊びを教えてやろう。それに好きな写真は撮り続けたい。気ままな風の吹くままカメラマンは、ぽっくり逝くまでそのままだ。オーロラも見たい。セドナにも行きたい。ドイツの町を闊歩もしたい。これじゃ、今仕事をやめるわけには行かないじゃないか。天に届け、ぼくの自分勝手なこの思い。