kazesan3風の吹くままカメラマンの心の旅日記

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魂の世話(2)
 




 「だいずせんせいの持続性学入門」の中で、高野雅夫さんは<魂>と対比させた<システム>の層を語っている。

 原発事故という大惨事に遭遇してしまった日本の庶民の大半は、その後の政治や行政の対応にあまりに愚かで滑稽でさえあるものを感じたのではないだろうか。「ただちに危険はない」と言った政府は、今も福島県民を愚弄しているとしか思えない。そこには人間としてのぬくもりや思いやりがまったく感じられない。けれど、彼らはシステムの中で考え動いているのだ。その中でしか機能していないのだ、としたら、さもありなんと思ってしまう。

 社会は、いろんな立場が交錯したシステムとして営まれている。その中で利益を追求し、搾取もし、自らを誇示し、他者の批判を繰り返している。そのシステムから漏れてしまうことを敗者とする向きもある。追い込まれて自ら命を落とすのは、このシステの外にある境遇に耐えられなくったということでもあるだろうか。順風満帆という人生がもしもあるなら、それはシステムの網をかいくぐりうまく乗り切ったというに過ぎないだろう。だがいつか誰にでも死だけは必ず訪れる。その時、何を感じるだろうか。いい人生だったと周りに感謝して逝く人がいて、死んでも死に切れないと嘆く人がいる、だろうか。少なくとも一度だけの死を前に、魂との対話があるかも知れない。その魂のことを、生きている今、感じてみることができるだろうか。

 夫を喪ったあのころの娘が不憫でならなかった。遺された幼子を思うと、胸が張り裂けそうだった。周りの誰もが哀しみに包まれた。あれから二年と少し、何かが目に見えて変わり始めている。人は生きているかぎり、生きて行かなければならない。動かし難い巨大な岩のような娘の哀しみが、やがてポケットの中で転がる小石のようなぬくもりに変わる日が必ずや来るだろう。その過程を支えるものがあるなら、何だろうか。システムの中でそれなりの生活は出来るだろう。だが生きることはシステムなどでは決して賄い切れない。その時、どうしても必要なものがあるのだ。それに出会うことを人生と言うのだと、今は考えたい。

 魂があるなら、誰もが持っているだろう。関係の生き物である人間は、だがほとんど誰も魂のことを向き合って語ろうとしない。ましてや魂のふれあいを感じる瞬間がどれほどあるものか。システムの外に放り出されたと思った瞬間に、もしかして、魂が顔を出しているかも知れないのに。

 今は娘を遠巻きに見守っている(と思う)しかない状況だが、あの日以来、それまで口にしなかった言葉を交わすようになった。「おとうさんのこと、子どもの頃からずっと恐かった。自分の気持ちを伝えるなんてとてもできなかった」と、最近になってメールが届いた。システムでしかなかった親子の関係には深い溝がある。ようやく見えない何かでそのひとつひとつを埋め始めているのかも知れない。まだまだ長い時間をかける必要があるだろう。だが大切な人を喪った哀しみが、固い何かを融かしてもいる。

 福島と石川の子どもたちが海や山で交流した夏のキャンプは、それぞれの自分勝手な思いを言い合える、それこそ開けっぴろげな家族のような雰囲気だった。その中でじっと耐えてひとりで泣いていた女子中学生がいた。ある日、突如として、大声を上げた。「わたし、真剣に怒りました。初めてです」と、翌日だったかそっと教えてくれた。一皮剥けたみたい、などと笑いながら。

 キャンプじたいはシステムで運営されながら、子どもたちはそれを意識することもなくシステムの外にあるようだ。子どもは本来、素の状態で生きている。昔よく使ったあのオブラートでくるんだような、妙なまやかしがない。鎧を脱いで、本音を露にする。自分を着飾っていたのではその場にいることが難しくなることを、本能的に知っているのかも知れない。それに触発されたこのジジイまでもが、本能で接することができたようだ。

 17日間の全日程を通して参加した福島の男の子が最後に言った感想をまた思い出している。「ぼくは一人っ子なので、喧嘩できてとてもうれしかった」。泣いたり悲しんだりすることも、子どもたちにとって得難いふれあいだった。守られたキャンプというシステムがそれらすべてを支えたのだと、今改めて感じている。それぞれが自分でするしかないという魂の世話を、どうやらふれあいの中で繰り広げていた。

 さて、この着飾った社会のシステムは、いったい何のために機能しているんだろう…





































| 15:18 | 日々のカケラ | comments(0) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
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