kazesan3風の吹くままカメラマンの心の旅日記

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海よ



 

 久しぶりだなあ。海を前にして、まるで旧友にでも再会した気分だった。海が好きだった、と過去形にしてしまえるほどに懐かしい。

 二十代半ばの数年、八重山の海で毎日のように遊んだ。ダイビングをしない日は釣り糸を垂れながら堤防で昼寝をして過ごした。若者なのに大した夢も希望もなく、夢のような日々を送っていた。時折、こんなに怠けた人生でいいんだろうか、という思いがよぎったけれど、迷うほどではなかった。沖縄と海が好きで、夜勤ばかりの小さな新聞社の暗室マンは遊んで疲れた昼間の身体を休めるにはうってつけの仕事だった。それがあろうことか、代わりに写真を撮ってきてくれと頼まれ、お前うまいじゃないかと褒められついでに、記事も書け、となり、旅行者気分で楽しんでいた島の生活が一変してしまった。安請け合いする性格は今も変わらないが、あのころ、事件もない島で記事を探すということがどんなに大変なことか、まったく思いもしなかった。美しい珊瑚の海を見やりながらため息ばかりついていた悩ましい日々が、懐かしい。

 あの友が逝ってしまったとき慰めてくれたのも、口能登の冬の海だった。吹き飛ばされそうになる冷たい強風に立ち向かい、大声で名前を呼んだ。誰もいないことに助けられ、声が嗄れるまで何度も何度も、泣きながら叫んだ。海は、でっかくて深い。人間が海としているのはせいぜいが大陸棚の辺りまでだろうが、光の届かない深海にも誰も知らない幾多の命が営まれている。海底火山だ、プレートの移動だ、などと言ったところで、想像することさえ容易じゃない。海の懐はどでかい、深すぎるほどに深い。人間なんて、水際の砂粒のようにちっぽけだ。ちっぽけがだから愛おしいのだと、海は鳴いているのかもしれない。

 海を前にしていると、新しいはじまりを感じた。悩みや哀しみを受け止めてくれた海が、今度は、ちっぽけな人間にもそれなりの力があることを教えてくれる。海があるから地球に命が誕生した。そして植物や動物、生きている命があるからこそ水と大気が循環し、海は海として再生し続けることができる。この壮大な自然の営みとは、いったいどこのだれが仕組んだものなんだろう。生きているこの瞬間に潜んでいるあまりの壮大さを思うと、微力な人間のこの無力さえも讃えたくなる。

 逝ってしまった人びとに、この思いは届いているだろうか。どんなに泣き叫んでもあなたにはもう近づけないけれど、海を見ていると、どうしてかすごく落ち着く。懐かしいあなたの声が聞こえるようだ。

 



































| 17:20 | 日々のカケラ | comments(0) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
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