kazesan3風の吹くままカメラマンの心の旅日記

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フクシマ




 「アホなことをアホなままに笑える余裕のあることが、生きていることの重要な属性だろうとは気がついたけれど、その余裕が全くないようなのだった」と、日野啓三『断崖の年』に所収されている「東京タワーが救いだった」の中で、腎臓の摘出手術を受けた折の経験を、氏が呟やくように書いている。このエッセーの中ではさして重要な箇所でもなさそうだが、そこではたと立ち止まってしまった。半世紀あまりも生きてきながら、その間に乏しい経験しかないとしても、なんとかそれを深めようと努めてきただろうか。毎晩のように立ち寄る温泉の脱衣場で見かけたりするテレビの戯れ言に、よくもまああんなアホなことばかり、などと、いつも小バカにしているだけの自分に気がついた。どうも世の中を馬鹿者扱いしているのかもしれない。自分自身の馬鹿さ加減を棚に上げて。

 ことに今は、東北で、フクシマだから、それ以外の世の中がバラエティーショー的に感じられて、まったくアホかと思ってしまう。ニコニコと余裕をもって笑っていればいいものを、毎度毎度、苦虫を噛み潰したような自分でしかない。これではほんとうに生きているということには、ならないのかもしれない。いつだったか『風の旅人』編集長の佐伯さんが、交流のある一流の表現者たちの惑わされない態度を書いていたが、それは世の中の動きをフンと横目で見て己の世界に打ち込んでいるような話だった。アホなことをアホなままに笑う余裕と通じるところがあるのかもしれない。

 今日ネットで出会った番組を見た。「ネットワークでつくる放射能汚染地図 〜福島原発事故から2か月〜」。15日にNHKで放映されたばかりのようで、すぐに閲覧できるような世の中に驚くし、大切な情報を伝えようとする個人の思いにも感動する。だが、そんな動きもアホな世の中のほんの一部なのではと思うと、自分では大した行動もしていないのに、虚しい気がしてくる。

 番組の中で、フクシマで放射線量を測定していた京都大学原子炉実験所助教の今中哲二さんが、測定結果をどう活かすのか、というような質問にでも答えて発言したのだろうか、「私たちのしていることは、正確な記録を取って、後世に残しておくことです」と言った。原発事故のこの非常事態には庶民の安全を最優先すべきだと思うけれど、それを推し進めるべき政府などの情報があまりに大雑把で作為的な印象が拭えない。NHKがこの手の番組を放映したことには大きな意味があると思うけれど、次の展開へとつながる新たな動きが生まれて来るだろうか。良識ある科学者たちの功績は大きい。それを後世だけでなく、今に活かさないではあまりに無念だ。

 この石川県の能登にある志賀原発の安全性について、北陸電力が地元住民を対象に説明会を開いている。福島原発事故の前と後で、いったい何が変わったんだろうか。フクシマが福島だけの問題でなく、今や世界中の騒動になっているというのに、電力会社も立地の地元も、県も政府も、だからこんな庶民も、相変わらず、一地域の問題として考えているかのようだ。それでいいはずがない。なぜもっと広い視野に立った場を作り、近未来に向けてのエネルギー問題として話し合う動きに進展しないんだろう。

 確かに、国をあげて話し合うスタートラインに立ったのだ、というような社説を見かけるし、推進反対の二極的な運動ではなく話し合いこそが必要だと、事情に詳しい作家がブログで書いていたりもするけれど、それではそうするためにこうしよう、というような具体的なアイディアまでは、いつも示されていない。どれも、所詮、掛け声にすぎない。何十年と原子力の危険性を訴えてこられた今中さんたちは、そんな日本の現状を痛いほどにわかっているのか、「後世に残る正確な記録を」というひと言の意味をどうしても考えてしまう。

 先日観た鎌仲ひとみさんの映画『ミツバチの羽音と地球の回転』は、原発や自然エネルギーの実情を知らなかった者を目覚めさせるには十分な力を持っていた。残念ながら国会内で上映した折に見た議員はわずかに3人だったそうだが、未来のあり方のひとつを示すこんな情報を含めた全体的な話し合いの場が、なんとか生まれないものか。

 アホなことをアホなままに笑う余裕などひとつもないのは、生きている心地がしないからだろうか。けれども、生きているんだから、アホは横目で見て、できることなら苦虫を抱きかかえたままでも微笑んでいたい(などとこれもアホの戯れ言だろうか)。ひとりひとりの良識ある科学者たちのような、実践を、アホにもできることがないか、探すしかないか。
 
































| 18:37 | 日々のカケラ | comments(0) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
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