kazesan3風の吹くままカメラマンの心の旅日記

| CALENDAR | RECOMMEND | ENTRY | COMMENT | TRACKBACK | CATEGORY | ARCHIVE | LINK | PROFILE | OTHERS |
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| | - | - | - | posted by スポンサードリンク |
チブリ尾根避難小屋
 「ヤギおじさんと登る白山」のぼくの最大の関心事は、当のご本人に白山を堪能してもらうことだった。できることなら事前にすべてのルートを下調べした上でコースを決めることができたら良かったのだが、いくら暇なぼくでもそれは叶わなかった。結局参加メンバーの顔ぶれも考慮しながら選んだのが、チブリ尾根、別山、南竜馬場、室堂、そして山頂という、ぼくにとっては割りとオーソドックスなものになり、実はこれでヤギおじさんの満足度を満たすことができるものかと多少の迷いも残っていた。



 ところがうれしいことに、蓋を開けてみれば山を知りつくしているようなヤギおじさんから何度も感嘆の声を聞くことができた。「これはすごい、こんなに大きな栃の木は見たことがない」。「尾根に出るまでの森の中を歩く距離が長いですねえ。これは山形辺りとはずいぶんとちがうんですよ」。「すばらしいお花畑だ。さすが高山植物のメッカ」などなど。最後には、「今回のコース取りは実に素晴らしかった」というお褒めの言葉までいただいてしまった。コースが選り取りみどりにあるわけでもないので、結果としてこれが残ったというに過ぎないけれど、褒められると不思議なものでこのコースがますます好きになる。ヤギおじさん登拝記念ルートとして、これからも年に一度は同じ日程でゆっくり歩こうかと思っている。

 チブリ尾根避難小屋は、勝手なものでぼくたちだけの宿泊を想定していたが、当てが外れてほかに六人もの先客があった。ヤギおじさんによると詰めれば二十人ほども寝られたそうだが、ぼくには息苦しいほどの人口だった。向かいの白山までも届きそうなヤギおじさんの声を筆頭にぼくたちのグループばかりがしゃべっていたけれど、小屋の中の熱気と沈黙はとても居心地が悪かった。山そのものは最高の場なのに、人が絡むとなぜこうなってしまうんだろうか。狭い空間だからこそ、ふれあう必要があるだろう。少人数のいくつかのグループがなんのご縁かすし詰めになって眠った一夜の避難小屋では、ザックに忍ばせてきたろうそくを点火しての静かなひとときを、残念ながら演出することができなかった。



 夕方になると南西の空に美しい夕焼け雲が広がり、それに気づいたテツオが「タカ、カメラ持って早く出ておいで。空がめちゃきれいだよ」と呼びかけた。そのタカ坊よりも早くぼくは外に飛び出した。ほかの客のほとんどは横になったままのようだ。なぜこの美しい空が気にならないんだろうかと、空ばかり見上げているぼくは不思議でたまらない。

 と、突然タカ坊が声をあげた。「どんどん色が変わっていく」。とてもはっきりとした、力のある声だった。ぼくはうれしくなった。馴れないおとなばかりの中にいるせいか滅多に自分から話さない中学生のタカ坊だったが、美しいものには人一倍惹かれるようだ。静かでおとなしい子を見ると、おとなたちはときどき、もっと活発になれと望んでしまいがちだが、それは大きな間違いだろう。内向的なということは、内側で燃えるような精神活動を展開しているときでもあるのだ。朱赤に染まった雲を見つめながら、ぼくは真っ赤に燃えているタカ坊の心を想像した。この同じ夕焼け空にはもう二度と会えないけれど、ぼくはきっと生涯忘れることはないだろう。そしておそらく、タカ坊も同じように。





葉っぱ塾〜ブナの森から吹く風
白山合宿その1〜山形から白山へ
白山合宿その2〜チブリ尾根を登る
白山合宿その3〜花に埋め尽くされる稜線




| 22:59 | 白山 | comments(2) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
スポンサーサイト
| 22:59 | - | - | - | posted by スポンサードリンク |
Comment








ブナの森を美しいとぼくが思えるのは、それが大好きなヤギおじさんの影響かもしれません。あの素晴らしいコースをいろんな人に体感してもらいたい気持ちと、世界遺産の登録を目論む動きを思うと、いつまでそっとしておいて欲しいという気持ちとがあります。すれ違うのにも苦労する砂防新道ですが、それもまたほかに目を向けさせないための大切な役割をしているのかもしれませんね。
posted by kazesan | 2009/08/15 2:57 PM |
 kazesan、チブリ尾根はほんとうにすばらしい森でした! しかもあのコースを歩く人がほとんどいない。まるで私たちのための貸切の森でしたね。ブナの森豊かな朝日連峰で山歩きを始めた私は、こうした森の優しさに満ちた山が好きなんだということを再確認しました。
posted by ヤギおじさん | 2009/08/14 5:42 AM |
Trackback
この記事のトラックバックURL: http://kazesan3.jugem.jp/trackback/556
<< NEW | TOP | OLD>>