kazesan3風の吹くままカメラマンの心の旅日記

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自分の目
 「ツキノワグマは確実に増えつづけている」と、自然界の報道写真家と自らを称して長年撮りつづけている宮崎学さんが断言した。石川県が主催した講演会「人とクマとのすみ分けを考える」の中での話だった。日本熊森協会に加わってまだ日の浅いぼくだが、クマたちは絶滅の危機にあるという見方が正しいのだろうと思い込んでいたから、ちょっと驚いた。短い時間の質疑応答では間に合わず、講演が終わった直後に思い切って宮崎さんに聞いてみた。

 「九州ではもう絶滅したそうですが、増えつづけているというお話と、すこし矛盾していませんか」。

 宮崎さんはにべもなく答えた。

 「ほんとうに絶滅したんですか?」

 それっきり、そっぽを向かれてしまった。宮崎さんは、自分の足で森に入り、自分の目で確かめたのか、と追及したのだろう。ぼくは確かに、絶滅したと聞いているだけだ。奥山に入る勇気など持ち合わせていないし、実際クマに出会ったら、腰を抜かして一発食らうのが関の山だ。

 宮崎さんの話にもうひとつ気になることがあった。「クマは奥山型と里山型に分かれたようだ」というのだ。「人工造林で荒れた奥山をクマは追われたわけじゃない。クマの食料がドングリばかりだと思ったらとんでもない。何百種類ものメニューを持っている。現状の奥山で十分に生きている」そうだ。近ごろはそして、里山に棲むクマがいる、という話だった。


 これらの話を、ぼくは自分の足で確認する気になれない。けれども宮崎さんは、そういう態度で自然を理解している気になっているのが今の日本だと指摘した。信州を主なフィールドとして歩き回り、無人撮影の技術を開発し、オリジナルな方法で導き出した結論に反論するものをぼくは持たない。だが、持たないから、宮崎さんの推測が正しいとも限らない。

 クマのことは、だから今のぼくにはここまでにしておくしかなさそうだ。

 そしてひとつだけ、共感したことがある。自分の足で歩く、自分の目で観る、自分の耳で聴く。これらは、間違いなく正しいアドバイスだと思った。世の中が言っているから、著名な専門家の話だから、新聞に書いてあったからと、大方はそれを鵜呑みにしている。自分の考えを持つこともなく、調べようともせず、他者の言葉を平気で口にする。それが、現代社会と言われる愚かな集まりだ。ぼくは、そのまっただ中でのほほんと生きている、愚鈍な者の典型だろう。

 クマと話ができたなら、どんなにか問題は簡単だろうに。でもそれはかなわない。かなわない人間同士なのに、なぜ自らの考えに固執し主義主張を繰り返し闘うような姿勢でいるんだろう。愚かでも、手をつなぎ、もっと大きな目で問題を見据えることができないだろうか。人間という動物は、ほんとうにどこまでもややこしい。物の見方を考えさせられても、表題の「人とクマとのすみ分けを考える」ことについては、だれも一歩も踏み込まなかった。

 熊森協会は、最近白山麓にトラスト地を購入した。まだそれ以降に具体的な動きはないけれど、管理するのは地元の会員になるのかもしれない。ぼくも少しは自分の目と感性を駆使して、自分なりの道を歩いてみようか。クマは、人が迷惑に違いないとは思うけれど。


| 10:57 | 原初の森 | comments(4) | trackbacks(0) | posted by マスノマサヒロ |
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Comment








 クマの現状については、本文に書いた通りです。今のぼくにはこれ以上知る術がありません。確かにいろんな立場の意見や考えを聞くというのは大切だと思いますが、それらを総合的に判断して自分の意見を作るというのもなにかもうひとつ腑に落ちません。そこには自分のまなざしというものがあるでしょうか。感化されるというのは、これまでのぼくの陥りやすいパターンでしたが、今は年のせいかかなり用心深くなっています。つまり、話している内容と話している本人の質の両方を見ているような気がします。見ると言っても、自分の狭い了見でしか見られないので、なかなか先は見えてきませんが。でもただひとつ大切にしていることがあります。それは、人間の良心、というやつです。自分勝手な思いというものは、誰が見てもわかるものではないでしょうか。素朴に人間らしくありたい、それがぼくの一番の基準です。でもその基準、ハードルが低くなったり高くなったり、打算的なぼく自身に当てはめてみても、スケールとしては使いづらいところもあります。それでも他意のない人の目は、どこか澄んでいるような気がします。
posted by kazesan | 2008/09/05 10:24 PM |
はじめまして。熊森の元会員です。
熊森と宮崎さん、たしかに両極論ですね。ある意味どちらも正解でどちらも不正解。クマ問題は、地域性によって増減が激しく異なっているというのが実情かと思います。どちらかというと、西日本は本当に絶滅の危機にあり、中部から東日本はおそらく増えている。「絶滅」の危機を全国に当てはめるのは間違いでしょう。
ツキノワグマを「自分の目」で確かめられる人なんていうのは、そう多くはないはずで、しかし、「自分のアンテナ」を駆使すれば、まあそれなりに答えも出てくるわけでして、いろんな人の意見に耳を傾けることは大事でしょうね。熊森さんの話だけに感化されると、感覚が現実とズレていくというのが、ぼくの感想ですが。
posted by J | 2008/09/05 9:37 PM |
 刺激的なコメント、こちらこそありがとう。のめり込むというほどにお婆の目と心は広がり深まって行ったようですね。ぼくも見習わなくっちゃ。「どんなに学んでも『正解』なるものなど無いと思いつつ」というのは、ものすごい響きでぼくに伝わってきました。とかく白黒をつけたがる現代ですが、答えばかりを求めているから争いになるのかもしれません。そういう意味で、自分のスタイルで調査している宮崎さんには感服してしまいます。クマならまずは何頭ぐらいいるのかと正確につかめていない現状にあって、行政や保護団体を頼りにせずに自分で調べているんですから。それぞれの地域はそれぞれで調べて守れ、と言っていたのを、今思い出しました。果てしのない道のようですが、ひとりが動いているだけで波紋は広がるんですね。
posted by kazesan | 2008/08/18 5:13 PM |
「原初の森」のお陰で興味深々のページに誘われ、面白いまなびを遊んできました。

まるで夏休みの自由学習みたいで、ワクワクしました。
それぞれの分野の専門家の意見交換の場があり、研究発表の
場があり、各分野同士のコミュニケーションあり、、、で、
お婆の不思議ワールド「生命」、「宇宙」、「時間」、「空間」の全てを満喫させていただけそうなところです。

どんなに学んでも「正解」なるものなど無いと思いつつも
こんなにワクワクするのは私の中に「生命」、「宇宙」、「時間」、「空間」に関する
遺伝子細胞が組み込まれているのかも知れない!!なんて、思い果てないお婆です。
ありがとう♪

posted by お婆 | 2008/08/18 4:23 PM |
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